断腸亭日乗2010/06/04 23:59

 何で永井荷風が好きになったのか、今、考えても分からない。昨年の秋ごろ、「墨東綺潭」を読んでからだろう。何故、あれを読んだのだろう。読書好きが集まって飲んだことがあったが、その話題になったのは確か。その時、読んでもいなったが、調子を合せていたことが気になって、とりあえず、その本を買った。読みづらい文章だったが、薄かったのですぐに読めた。小説の中に、主人公が書いた小説が入っている。なんだか、変な感じでどっちを読めばいいのかと思った。どちらがメインなのか。当然、小説中の小説は付け足しというか装飾というか、そんな感じなのだろう。
 しかし、どんな筋立てだったか忘れている。もう一度、読み返そう。と、書きつつ、今回は「断腸亭日乗」のことを書きたかったのだ。昭和11年、58歳のときに足しげく玉ノ井に通って、「「墨東綺潭」を書きあげたのだが、実に興味深く、ハマっている。他愛のない日常で、どこで何を食べたとか、どの楼に上がったとか、どこの女がどうのとか、延々、書き続けている。たまには俳句を作ったり、時局のことを書いてもいるが、世捨て人のごとく、世間、文壇などに興味を持っていない。吝嗇だったというが、銀行への預金などについても書いてある。妻もなく、子もない。既に1人で生きていくことを決意し、そのために蓄えていた風にも見える。そして、昭和34年に孤独に死んで行くまで、せっせと同じ行動を取り続けていたらしい。昭和12年まで読み進んだが、これからどうなって行くのだろう。今はちょうど私と同じ歳の58歳。これからの自分を見るようで恐ろしいが、時代は違うが、これが予言のようにも感じる。
 フランスに行く前に彼の「フランス物語」も読みたい。それは荷風が27歳の時に書きあげたもの。だいぶ違うものだろう。