酒だけが人生2011/06/06 14:45

 永井荷風である。彼は酒におぼれていた訳ではないだろう。しかし、この光景はいつ見てもいい雰囲気だ。老境に入り、こんな風に酒を飲みたい。
 時代が違うということもあり、こんな飲み屋があるべくもない。ワイン好きの私だから、この店で注文する料理も思い浮かばない。でも、でも、この寂しさを持ちたい。悩みたい。回想の世界に遊びたい。ないものねだりの子守唄。

紺屋高尾と幾代餅2011/06/09 11:11

 落語が好きだ。小学生の頃から、父親の影響で聞いていた。夢楽、小せん、伸治、柳朝などがテレビの番組で「おおぎり」みたいなことをやっていたのを見ていた。最初に覚えたネタは「寿限無」だったろうか。それ以来有名ネタはほとんど聞いた。
 ふと目にしたネットでの「幾代餅」も知っているつもりでいたが、筋が見えない。そこで調べてみたら、

 日本橋の米屋の若い衆が吉原で人気随一の花魁に恋患いしたが、親方に「花魁は大名の遊び道具といっても所詮は売り物買い物。一年間働いて金を貯めれば会わせてやる」と言われ、いきなり病気回復すると必死に働きだす。一年後、「野田の醤油問屋の若旦那」と身分を偽り、幇間医者の案内で姿海老屋に向かう。

 という話だった。どこかで聞いたことがあるなと思ったが、「紺屋高尾」と同じじゃないかと分かった。立川談春の「紺屋高尾」が絶品で、何度も聞いているが、今度、「幾代餅」も聞いてみたい。紺屋と米問屋の違いもあるし、お金を貯める期間も3年と1年の差、どんな展開があるのだろう。そう思うといても経ってもいられなくなって、「落語の蔵」というネットでの購入を考える。

Star Lane2011/06/13 11:43

 ススキノでの定例宴会にはワインを持ちこむようになった。ウイスキーでもいいのだが、私と、もう1人しか飲まないので、近くのワインショップに寄って買ってきて、自分だけのティスティングを楽しむ。今回は、ちょっと気張ってカリフォルニアの有名ワイン。値も張っているが、ここには書かないことにしよう。あの「オパスワン」よりも美味しいと絶賛されたとポップには書いてあった。
 結果は、「好きな人は好きなんじゃないですか」と言った感じ。「やっぱり、アメリカワインだよね」とは、もう一人のティスティング者の言葉。カベルネ・ソービニョンなのに、複雑に甘いのだ。この玄妙さがアメリカ人にはうけるのだろうが、私は少し引いた。これならば、同等のブルゴーニュを頂けばよかったと。
 前に、フランシス・コッポラのワインも飲んだことがあるが、あれも甘かった。彼らは、こういったものが好きなのだ、きっと。
 昨夜は、ぐーっと安くなってチリの「コノスル」を夕飯時に飲んだが、そちらの方がよっぽど食事と相性が良かったように思えた。値段は4分の1なのに…。
 日々、ワインのことだけは頭にある。これが商売に結び付かないものか、真剣ではなく考えている。

フレッド ハーシュ2011/06/22 16:11

 エイズのジャズピアニスト、フレッド・ハーシュは見るからにゲイ風であったが、今では発症しているのだろう。現在、鬼気迫る容貌でライブに明け暮れているようだ。もともと、綺麗なフレーズと繊細な感覚が特徴のピアニストだったが、ここにきて、ヴィレッジ・ヴァンガードのソロピアノと、昔のメイベックのソロピアノ・シリーズのアルバムを買った。同じソロで、どれだけ違うのだろうか。その前に、ノンサッチ・レーベルの「パッションフラワー」を聞いてみる。ビリー・ストレイホーンの曲をやっているアルバム。これもソロだったっけと聞き始めたら、ストリングスが入っていた。また、歌っている曲もあった。“U.M.M.G”は「アッパー・マンハッタン・メディカル・グループ」だったっけ。「レインチェック」は「雨切符」ってこと。野球の試合で雨が降り、再試合になったときに渡される入場券と聞いていたが。“Blood Count”は、赤血球、白血球の血球数のこと。早死にしたストレイホーンは病院に縁があったのか。
 “Day Dream”だって、「白日夢」。ベッドで朦朧としている感覚かもしれない。朝から、このアルバムを聞いていたが、実にしっくりきてこの場を離れがたい。また、夜にとも思うのだが、夜には違う感覚になってしまう。さて、どうしたものだろう。

古本の価値2011/06/30 13:10

 中川一政の随筆を、石川書店廃業の時に、捨て値で3冊買った。計1万2千円。昭和40年代の単行本で、外箱までついている今では見かけない豪華本。画家中川の随筆は前から結構いい値がついていたから、内容も読まずに買ってしまった。いずれ、そこそこの値段で売れるだろうという思い込みも手伝って、簡単に財布の紐(いまどき紐のついた財布などないが)が緩んだ。
 しかし、ネットで調べてみると、こちらが買い取った値段が破格でもなく、また、売るときはその5分の1以下が相場らしいということが分かった。変なものに投機するものではない。そういえば、片岡球子の画集を伯母のところから持ってきたが、これは定価6万8千円。まだ消費税のない時代に買ったもの。これは2万円以上で売りに出ていたが、買取してもらうと1万円以下なのだろう。
 今、お金に困っている訳ではないが、本はともかく、私の持っているCD、レコードがどれくらいになるのか知りたい。総額数1千万円をかけたコレクションだったが、きっと300万円にもなれば恩の字なのだろうか。